北海道 地質由来有害物質情報システム GRIP【試験公開版】

H23-25 重点研究 報告書「北海道内における自然由来有害物質の分布状況」

有害物質の濃集・拡散過程

内陸域から海域への自然由来有害物質の移動

波浪・風による影響

溶出/含有リスクが「波浪・風による影響」を受ける地質体としては,以下のものが挙げられる.

沿岸域の堆積物では「海浜・浜堤・砂丘堆積物」が該当し,海域の堆積物では「浅海底砂質・泥質堆積物」,「海底扇状地堆積物」「海底細粒堆積物(泥岩・頁岩・粘板岩)」が該当する.

図12に海浜〜海域環境の堆積物における砒素溶出量を示す.この図から,海底細粒堆積物および海底扇状地堆積物において砒素溶出量が高いことがわかる.海域における堆積作用および自然由来有害物質の挙動は,内陸域とは異なり,波浪による影響を強く受ける.

内陸域から海域に運搬される懸濁物質は,河口域で海水と接触し凝集沈殿し,一部は沿岸域に堆積・固定され(「海水の影響」参照),それ以外は海域へと運搬されることになる.波浪の影響が及ぶ領域(波浪限界水深以浅)では,波に洗われた細粒粒子が浮遊し沖合に再移動することで,砂粒子などの比較的粗粒な堆積物が残存しやすい.また,浮遊・懸濁した細粒粒子は,最終的に波浪の影響が及ばない領域(波浪限界水深以深)に移動・堆積する.これらの細粒粒子には,砒素が選択的に収着していると考えられることから,波浪による分級作用に伴って,細粒粒子とともに砒素が波浪限界水深以深に移動するものと推定される.また,波浪限界水深以深に堆積した細粒堆積物は,タービダイト流により深海に移動・堆積することがあり,タービダイトの堆積によってできる海底扇状地堆積物においても,砒素の溶出リスクが高くなるものと考えられる.

内陸域においては,シルトや粘土粒子よりも,相対的に風によって運搬されにくい淘汰の良い砂サイズの粒子が堆積した砂丘堆積物が形成される.波浪による作用と同様に,このような堆積物は,砒素が収着しやすい粒子が少ないため,砒素の溶出量は低い傾向を示すようになったと考えられる(図12).